角膜クロスリンキング治療を始めて10年以上が経過したことに思いを寄せて

私が円錐角膜の患者さんに対して角膜クロスリンキング治療を開始したのは、2011年のことです。気がつけば、すでに14年の歳月が経ちました。時の流れの早さを実感します。ドイツの眼科医によってこの治療法が開発・報告されたのが2003年ですので、私が導入したのはそれから約8年後になります。

当時は、どの程度効果が持続するのかなど、まだ十分に分かっておらず、眼科医の間でも認知度は低い状況でした。そのため、患者さんをご紹介いただく機会も多くはありませんでした。

それでも私が角膜クロスリンキングを導入しようと決めたのは、円錐角膜の患者さんにコンタクトレンズを処方していても、しばらくすると病状が進行してしまうケースを多く経験したからです。病気は徐々に悪化し、そのたびにコンタクトレンズを変更しなければならず、視力も次第に出にくくなり、やがて日常生活にも支障をきたすようになります。円錐角膜は進行性の病気であり、進行する場合はあっという間に悪化してしまうことも少なくありません。患者さんが気づいたときには、すでにかなり進行しているというケースも多いのです。

そんな中、病気の進行を抑える効果が科学的に証明された治療法として、角膜クロスリンキングが登場しました。私は迷うことなく、この治療を取り入れました。

それから10年以上が経ち、角膜クロスリンキングは世界中で標準的な治療法として広く行われるようになりました。日本国内でも、眼科医の間での認知度は着実に高まっています。しかしながら、日本ではまだ正式に認可されていないため、国立大学病院などの公的医療機関では実施できず、十分に普及しているとは言えません。今回のクラウドファンディングをきっかけに、この治療法が将来的に認可される道が開かれることを願っています。

10年後には、日本でも角膜クロスリンキングが正式に認可され、誰もが安心して治療を受けられる環境が整っていることを期待しています。その実現のためにも、私はこれからも円錐角膜の患者さんをしっかりと治療しながら、学会や研究会での発表・啓発活動を通じて、角膜クロスリンキングの普及に貢献していきたいと考えています。

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